NRIが持つDNAはどう誕生し、長年どのように継承されてきたのか。
1965年の創業以来、私たちが受け継いできたDNAや育んできた価値観を、関連する出来事とともにご紹介します。
旧野村総合研究所の設立趣意書
(1962年に野村證券が作成)
NRIの源流の一つは、1965年、野村證券が調査部の機能を拡充し、より高度な資質を備えた研究調査機関への飛躍・発展を期して、旧野村総合研究所を設置したことにさかのぼります。
その設立趣意書「野村総合研究所―その構想と方針―」には、設立のねらいとして、「日本でこれまでにない、あたらしいタイプの研究所となること」「研究調査を通ずる産業経済の振興と一般社会への奉仕」の2点が謳われています。これは、本業を通じて新たな社会価値を創造し、社会課題の解決に取組むことを第一義とするNRIのDNAとして、今日まで受け継がれています。
鎌倉の旧NRI本社
1960年代、旧野村総合研究所(NRI)と野村電子計算センター(NCC、後に野村コンピュータシステムに社名変更)は、社会に価値を生み出すことを第一義として発足しました。両社が社会性をサステナブルに実現するには、会社としての発展・成長が大前提であり、財務の健全性が求められます。株式会社の形態を選んだのは、そのような理由がありました。
当時の日本は、高度経済成長期の真っただ中。
羅針盤たる方向性とコンピュータ利用の高度化が必要とされていました。
そこで旧NRIは「産業経済の振興と一般社会への奉仕」を、NCCは「コンピュータの高度利用と新たな可能性の広がりを広く一般企業に開放すること」を、それぞれ掲げて設立されました。
この二社を源流とする現NRIは、さまざまなパートナーとの共創を通じてパラダイム変革を実現し、社会課題の解決を目指す「DX3.0」を推進しています。
社会のために挑戦し続けるDNAは、今もなお息づいています。
1973年竣工のNCC四谷本社ビル
1973年竣工の
NCC四谷本社ビル
「顧客とともに栄える」――これはNRIが創業以来大切にしてきた理念であり、伝統です。この理念と表裏一体を成す「調査と情報」は、旧NRIがその前身「野村證券調査部」であった頃より育まれてきました。
1970年、日本で初めて開催された大阪万国博覧会の入場者数をほぼ的中させ、万博の成功を陰から支えました。この背景には、“しっかりとした調査に基づく情報を提供することが、自身と顧客の成長に直結する”という信念がありました。
また、NCCが先鞭をつけた「マルチベンダー方式」では、しっかりとした調査で得られた情報に基づき、メーカーやハードウエアの機種にとらわれず、最適な組み合わせでシステムを作りました。ここにも、顧客課題の解決に真摯に取り組む姿勢が貫かれています。
両部門が一つになった現在のNRIでも、この理念はなお息づいています。
野村證券に搬入される「UNIVAC-120」
野村證券に搬入される
「UNIVAC-120」
NRIのITソリューション事業の源流は、1953年に野村證券に設置された計算部です。1955年には、米国で完成したばかりの商用コンピュータ(UNIVAC-120)を導入、日本初のコンピュータの商用利用として話題となりました。これは、「これまでの世の中にない新しい仕組みを創り出していきたい」という想いが実現したものです。
1966年には、計算部が分離・独立して新会社「野村電子計算センター(NCC)」が設立されました。その設立理念は、「野村證券における高度な情報システム開発から得た様々なノウハウを、より多くの企業の経営合理化などに役立てること」とされ、社会への奉仕と新たな価値を生み出す姿勢を表しています。
NCCは設立直後から、当時の日本では新しい証券業務における「総合オンラインシステム」の開発を進め、窓口業務の徹底した合理化を推進しました。そして、1970年代初頭からは、共同利用型の証券オンラインサービス「STAR」を提供しており、これは「クラウド」という言葉さえなかった時代に、現在の社会で潮流となっている「所有から利用へ」という動きを先取ってきたことの証左です。
社会の発展を見据え、新しい仕組みに挑戦していく姿勢は、今もなお引き継がれています。
「’87 TOKYOフォーラム」のプログラム
旧NRIから引き継がれてきたDNAに、「広い視野を持ち、多様な課題の解決に取り組む」という姿勢があります。設立趣意書に「国際経済などの諸問題とも取り組む」とある通り、その眼差しは国外まで見据えていました。
旧NRIを含めた世界主要国からのシンクタンク代表が集う「TOKYOフォーラム」が1987年に始まり、世界的頭脳や内外の企業経営者も参加。地球経済が直⾯する課題や、経済摩擦を乗り越える企業経営のあり⽅などが討議されました。後にNRIは、世界主要国のシンクタンクと共に「T5(Think tank 5)」を結成。長く研究・提言活動を行うことになります。
そして現在のNRIは、「産業資本主義」に代わる「デジタル資本主義」の進展をにらみ、「NRI未来創発フォーラム」や月間論文誌『知的資産創造』などの各種媒体で積極的に発信を行なっています。SDGsやコロナ禍による世界的な価値観の変化など、社会的課題に能動的に取り組む姿勢は、設立当時から受け継がれています。
日本有数のシステムインテグレーターに成長したNCCは、お客さまのため必要な技術は自分たちで開発する姿勢で臨んできました。
お客さまの要望を実現するため、お客さまの本当のニーズを捉え、場合によってはそれを先取りして、お客さまのために真に使い勝手のよいシステムをつくる。そのために必要な技術は自分たちで開発しました。設立当初は、プログラム言語を自ら設計し開発するほどでした。
今も、お客さまの真の課題を解決するため、最適な技術を組み合わせてソリューションを提供しています。これを可能とする知見、高い技術力と品質、仕事の緻密さは、磨かれ続けています。
「顧客視点」に立脚し、お客さまにとって真に必要なものを、ニーズを先取りして提供するNRI。その代表的な実績のひとつに、企業のシステムを統合的に診断してアドバイスをする「システムクリニック」があります。
80年代当時、NCCの社長を務めていた松浦正輔は、企業経営者へ1通の手紙を出します。そこには、成人病予防のための人間ドックを例に挙げて、「システムクリニック」をおすすめする内容が敬愛を込めた言葉で綴られていました。システムクリニックサービスは、現在のシステムコンサルティング業務の前身となります。
コロナ禍などによる社会変化が進む中、日本企業ではDXが急務であり、現代のシステムクリニックがまさに求められています。お客さまの潜在的なニーズを見出して先取りする精神は、今こそ発揮されるべきときを迎えています。
野村證券 田淵節也会長(当時)からの祝辞
旧NRIとNCCが合併し、新生NRI(野村総合研究所)が誕生したのは1988年のことでした。それは突然のことで、まさに青天の霹靂。
合併を推進した、野村證券の 田淵節也会長(当時)は、今後の情報サービス企業の姿について、「来るべき高度情報化社会を見通したとき、システム機能を持たないシンクタンクはありえないし、シンクタンク機能を持たないシステム企業もありえない。双方の機能を一体的に持った企業でなければ、情報サービスの分野で生き残れない」と考え、合併はそれを先取りするための布石だと述べました。
「研究所」と「コンピュータ」の合併は、「乾坤一擲〈研コン一擲〉」の大勝負になる――。「1プラス1は2ではない。この合併は必ず10になる。」と断言した通り、新生NRIは二つの源流のカルチャーの違いを乗り越え、シナジー効果を発揮します。それはまさに「時代の要請を予見し、大胆に道を切り拓く」NRIの姿勢そのものです。
合併当時「日本が世界で生きていくために一番必要な会社が今日生まれた」と田淵会長がその意義を語ったように、「なくてはならない存在」として社会に貢献し続ける信念のもと、NRIは未来への道を切り拓きながら前進しています。
NRIは2001年の東京証券取引所市場第一部への株式上場を目前に、「知的資産創造企業」から「未来社会創発企業」へと飛躍を図っています。
そこでは、「新たな社会のパラダイムを洞察し、その実現を担う」ことと、「お客さまの信頼を得て、お客さまとともに栄える」こと、この2つがNRIグループの使命として再確認されました。そして、新たなコーポレートステートメントとして「未来創発 -Dream up the future.-」が掲げられました。これは、思いがけない新しいビジネスモデルを次々と生み出そうとするNRIの姿勢を表すと同時に、「未来はわからない、見えないものだから、思い切って私たちで作ってしまおう」といった、NRIの未来に対する意気込みを示しています。
「未来を予測するだけではなく、未来を自ら作り出してこそ価値がある」とNRIは考えます。「未来創発」のもとで、社会課題の解決に取り組み、お客さまとともに持続可能な未来社会づくりに挑み続けています。
東証一部上場を果たす
2001年12月、NRIは東京証券取引所の市場第一部に株式を上場しました。「自立」と「自律」、2つの「じりつ」を追求する決意と覚悟で臨みました。上場にあたり、「世の中のためでなく株主のために働くのか?」「経営が短期志向にならないか?」といった懐疑的な声があった一方で、「品質を重視するNRIにとって内部統制を確立するよい機会だ」「一企業として自立することができた」という肯定的な意見も存在しました。
ここでいう「自立」は、野村證券という大樹の陰に隠れず、主体的な企業として自らの力で生き抜いていく覚悟を、「自律」は、社会のルールに則り、自らを律することに責任を負うことを意味しています。
NRIは、今もこの「じりつ」に不可欠な成長を続けています。その裏にあるのは、「新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担う」「お客さまの信頼を得て、お客さまとともに栄える」という2つの使命。「品質へのこだわり」も土台としながら、お客さまに価値ある提案を行い、それを付加価値の高い事業に結びつけることで、共存共栄を続けてきました。
NRIは常に「じりつ」を追求し、自己改革の歩みを止めません。
NRIグループは創業以来、社会と共有できる価値を創造してきました。その中で、「3つの価値共創」を定義、推進しています。
「新たな価値創造を通じた活⼒ある未来社会の共創」「社会資源の有効活⽤を通じた最適社会の共創」「社会インフラの⾼度化を通じた安全安⼼社会の共創」――これら3つの価値共創により、豊かで快適な社会、あらゆる人が暮らしやすい社会、そして安全安心な社会を目指し、さまざまな変革や事業に取り組んでいます。
NRIグループが有するコンサルティングからITサービスまで一貫して提供できる能力を発揮することで、お客さまや社会の課題解決に役立つ事業を展開でき、広く社会に貢献できると、私たちは考えています。
これからの社会では、変化が加速していきます。社会課題の複雑化・深刻化、産業構造の流動化、先端技術の進化とコモディティ化などが進み、人々の価値観の多様化も進むでしょう。
そのような中、NRIグループは、創業時から受け継がれている精神である「本業を通じて社会課題に取り組み、新たな社会価値を創造する」ことを通し、世界をダイナミックに変革し続けていきます。
そして、「デジタル社会資本」――デジタル技術で新たな価値を生み出し、社会や産業を支える共通のインフラやサービス――を創出し、豊かで活力ある持続可能な社会に寄与します。
NRIのDNAはこれからも未来へ紡がれていきます。